偽文書について

 古文書のうち、形式、内容において事実に則さず作為された種類のものを偽文書と称します。
 このため、古文書の内容で歴史の真偽を検討する歴史学では、偽文書は非常に難しい問題となります。
 しかし、それがゆえに偽文書のレッテルを貼って、研究しない場合も少なくありません。
 偽文書には、その成立に於いてきちんとした理由をもつ物もあり、それもまた歴史上に重要な意味を持っています。
 偽文書の研究、検討は、一部の研究者の手で進められているが、認識としてまだ低いのが実情です。
 そこでなぜ、偽文書が存在するのか、偽文書の研究にどういう物があるのかを、ここで述べてみることにしました。

参考書籍

・『日本史広辞典』
・『角川日本史辞典』
・『日本史大事典』
 網野善彦『日本中世の非農業民と天皇』
 石井良助『中世武家不動産訴訟法の研究』弘文堂 1938年
 飯倉晴武『古文書入門ハンドブック』 1993年
 斎木一馬『古記録の研究』吉川弘文館 1989年
 佐藤進一『[新版]古文書学入門』法政大学出版局 1997年
 『日本の古文書』岩波書店
 『古文書入門』河出書房新社
 『日本古文書学提要』新生社
 笹目蔵之助『古文書解読入門』新人物往来社
 笹目蔵之助『続古文書解読入門』新人物往来社

参考論文

 斎木一馬「日記の改竄と偽作について」(『日本歴史』11 昭和23年)
 斎木一馬「古文書と古記録」(『日本古文書学講座』総論編 昭和53年)
 橋本義彦「古記録誤写誤読」(『日本歴史』339 昭和51年)
 沼田次郎「日記に見る日付の錯誤」(『日本歴史』488 昭和64年)

参考史料

 中世
 「高野山御朱印縁起」
 「廻船式目」
 「益永文書」糸永昌職譲条(貞応元年)
 「中条家文書」関東下知条(永仁4年)
 「太平記」
 「壬生家文書」官務家領献納目録(文明11年)
 「晴高宿禰記」官務成吉書宣旨(文明11年)
 「安田毛利文書」常全譲条(応永14年)
近世
近代
 「六法全書」刑法第17章から21章


偽文書を検討するには、以下のような問題があると思われる。

1、史料の形式の区分。
2、文書の真偽を検討する方法。例外的な形式の検討。
3、偽文書の存在理由の検討。
4、偽文書として定義づけられた文書の再検討。


分類

古文書

 古文書の内容に関わる事として

  文書それ自体が、偽物である場合。
   ・自己に関わる目的
    ・家格を強化するため
      戦国大名などには、成り上がりのものがあるため、官位の授受などの裏付けに必要な家格の偽作。家系の偽造。
    ・職業の社会的身分の確定化
      芸能、特殊技術などの職業が社会的に定着する際に、政権によって存在を認められたという証拠として作られる。権力者の同意の上で作為されることもあると思われる。
    ・経済的所有権の裏付け。
      主に土地の所有に関する理由付け。
   ・他に関わる目的
    ・策略
      誰かを陥れるため、あるいは、他の個人の活動の大義名分を用意する必要から。

  文書の内容が現実に即していない場合
   ・形式上必要なための偽造
      形式が合ってないため、偽造と判断されたもの


 古文書それ自体に関わる事として

  文書自身の価値の場合。
   ・古文書そのものを売却することによって利益を得ようとする場合の偽造行為。


 必要があって偽文書としたもの
  つまり偽文書として作成されたもの。その理由には様々なものがある。

   この場合の問題点は、偽文書だからとして、検討もせずにその価値を否定してしまう場合があり得ること。
   特に家格を示すための記録や、土地経済に関わる場合には、偽文書として作られたものは多い。


 正確を期せず偽文書として判定された場合。

  記述に何らかの間違いがあったもの
    歴史的に見て間違っているが、作成したものにとっては、必ずしも間違ったつもりではないものを、内容がおかしいからとして、偽文書と判定されているもの。

  形式に則ってない文書
    偽文書として作成されたわけではないが、その書式が他に類を見ず、形式に則ってないために、偽文書と判定されたもの。

  下書き
    下書きを、形式に乗ってないために、偽文書と判定されたもの。

  この問題は、実に基本的なことだが、こういう例が無いとは言えない。



 記録、典籍について

   記録、典籍は正確には文書ではないが、これについても内容において偽書の部分がある。
   古文書と同様に検討する必要があるが、ただし、かつて記紀神話が検討もされずに否定されたような愚行は避けるべきである。

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